ペット可物件で暮らす

【第3回】「この保護犬、入居できますか?」ある事実に大家悩む

こんにちは。横浜にある愛犬家専用のペット共生型賃貸マンション「シェンノワール」の大家です。
さて、早くも3回目となりました「黒犬マンション通信」。今回は、シェンノワールで初めてお迎えした保護犬のお話です。
前回の「柴犬と一人暮らししたい入居者さんがやってきた!」のAさん同様、愛犬との生活を夢見てシェンノワールに飛び込んだBさん。入居早々、大きな決断を迫られることに…。

ついにシェンノワール・ファン現る!

Bさんがシェンノワールを訪ねてきたのは、開業から1年が過ぎ、シェンノワールが理想的な愛犬家コミュニティマンションとしてまわり始めた頃でした。
その頃の大家は、「残るは最後の一部屋!ここまできたらシェンノワールに相応しくない入居者はお断りよ!」と、世話焼き大家ならぬ鼻息荒い小姑大家(笑)。そこへ、「ホームページ見ました!犬を飼ったことがない私でもここなら飼えると思って。ぜひ入居したいです!」とやってきたBさんは、まさに大家が待ち望んでいたそのものズバリの方でした。
そんなBさんは、犬を飼うのも初めてなら、実は一人暮らしも初めてとのこと。
これまで犬を飼える環境になかったため、犬の保護施設「NPO法人アルマ」でボランティアをすることで犬愛を満たしていたそう。そんな中、そのNPO法人アルマで暮らしていたヤムちゃん(Mix♀ 当時推定5歳)に心を奪われてしまい、初めての一人暮らしと初めての愛犬ライフに同時に飛び込む決意をしたそうです。
「へー、ボランティアまで。本当に犬が好きなんだねぇ…。」と、入居後のBさんと大家宅でお茶を飲み飲み、話を聞いた世話焼き大家。もう意中のコがいるならお迎えする準備をお手伝いするだけね、と余裕シャクシャクだったのですが、この後Bさんと大家の頭を悩ませる、ある事実が判明します。

Bさんの心を奪ったヤムちゃん

保護犬ヤムちゃんにある問題が??

さて、意中のヤムちゃんを迎えるべく、すぐに譲渡申請の手続きを開始したBさん。話を進めていくうちに、ヤムちゃんの健康面についてNPO法人アルマからあることを伝えられます。
「え?ヤムちゃんがフィラリア…??」
フィラリア症は蚊を媒介とした寄生虫による犬の病気で、最悪の場合死に至る恐ろしい病気です。定期的な投薬により寄生虫を駆除することで防げる病気なのですが、薬を飲ませてもらえない環境にいた保護犬は、感染していてもおかしくありません。ひとり放浪中に保護されたというヤムちゃんも、可哀想にそんなコのひとりだったのです。
初めての一人暮らしで、初めて飼う犬がフィラリアって…。そんな重荷をBさんに背負わせてしまって良いの?そして入居している他のワンちゃん達への影響は??他の入居者さんに不安を与えることになってしまわない???
と、Bさんの負担を考えつつ、大家の立場としての判断を迫られることになった大家夫婦。
そこで、まずは後者の大家問題を解決するために、我が家の黒犬たち(甲斐犬の風花と華瑠美)の獣医さんに状況を説明して、他のワンちゃんへの影響を聞いてみました。
すると、予防薬をきちんとあげていればフィラリア症になることはないとのこと。シェンノワールでは、入居審査の中で(入居後に犬を迎える場合はその時点で)フィラリア予防薬の定期投与について確認していること、そして、投薬を忘れないように毎年の投薬開始時期に掲示板(以下写真)を出していることから、フィラリア症のコを迎えても大丈夫!という結論に至りました。
なので問題は、前者のBさんの負担のみ。かつて一人暮らしで華瑠美を飼っていた経験者としては、簡単に後押しできることではありません。Bさんとしっかり話さなければ…。

毎年5月に掲示しているフィラリア予防薬の掲示板

愛犬を救いたい!

フィラリアに感染しているとなると、定期的な通院が必要で時間を取られること、それに伴い多額の医療費がかかること、そして運悪く発症してしまった場合にヤムちゃんがどんな状態になるのか。どれをとっても大変だけど、それでもやっぱりヤムちゃんを迎えたいの?大家夫婦はしつこいくらいBさんに話しました。
たくさん悩み、ご両親ともたくさん相談したというBさん。しばらくして、「それでもヤムちゃんを迎えたいです」と強い決意を私達大家に伝えてきました。そして少し泣きそうな顔をしながら、「でもシェンノワールに迷惑がかかるようなら諦めます」という一言も。
ヤムちゃんはもうすっかりBさんの中で愛犬になっている、私達大家がここでBさんのためを思ってNGを出しても、Bさんは病気のヤムちゃんを見捨てて他のコを迎えることなんてできるわけがない。こうなったら、一人暮らしをしてでもヤムちゃんを迎えたいと強い決意をもってシェンノワールに来てくれたBさんの気持ちを尊重しよう!
と満場一致の大家夫婦。ドキドキしながら大家判断を待っていたBさんに「大変かもしれないけど一緒に頑張ろう!」と伝え、ヤムちゃんを迎える準備を進めてもらうことになったのです。

シェンノワール初の保護犬誕生!

揺るぎようがない決意をもって無事に譲渡審査をクリアしたBさん。お試し期間となるトライアルの日にちも決まり、残るはヤムちゃんの生活環境を整えるのみとなりました。
ということで、ようやくここからが世話焼き大家の腕の見せ所。さっそくBさんとともに、ヤムちゃんがお留守番の間も快適に過ごせるヤムちゃん部屋を製作!

Bさんと大家の初めての共同作業(笑)

そして、いよいよヤムちゃんを迎える日がやってきました。
保護団体の方に連れられて遠路遥々やってきたヤムちゃんは、慣れない小旅行にお疲れにもかかわらず、初対面の大家にも笑顔を惜しみなく振りまくサービスぶり。
ちなみに、その後のBさんのお部屋で行われた保護団体の方からのレクチャーに、世話焼き大家もちゃっかり同席していたことは言うまでもありません(笑)

お迎え当日のヤムちゃん

夢に見た愛犬ライフが今ここに!

これまでのひとりでの生活が、ヤムちゃんを中心とした生活に一変したBさん。
朝の散歩のために、これまでよりも1時間早く起き、夜は帰宅後のお疲れの中で散歩にいく過酷な日々に加え、ヤムちゃんの病気のケアための定期的な通院と、体力面だけでなく金銭面の負担も大変だったと思います。
でもそんな大変さも吹っ飛ぶ朗報が!
入居から数か月後、ヤムちゃんのフィラリア症が陽性から陰性に陰転したのです!
Bさんとヤムちゃんの強い絆が奇跡を起こしたのです!
ともに苦難を乗り越え、今やすっかり相棒になったBさんとヤムちゃん。見ているだけでこちらまで笑顔にさせてくれるベストパートナーっぷりに、あの時の判断は正しかったと思う今日この頃です。
そして、「シェンノワールのおかげで幸せです!」なんて大家冥利に尽きることを面と向かって言ってくれるBさんに、日々エネルギーをもらっている世話焼き大家なのでした。

シェンノワールお花見交流会にて(左から、かりんちゃん、ヤムちゃん、華瑠美、風花)

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