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「ペット共生住宅のあり方を考える」シンポジウム開催。愛玩協「ペットフレンドリーホーム宣言」に意気込み

3月14日(水)、東京都文京区の東洋大学にて「ペット共生住宅のあり方を考える」シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは、5月にスタートするペットフレンドリーホーム宣言を踏まえ、改めてペット共生住宅を考えるというもの。モフマガbyペットホームウェブスタッフも参加させていただきましたのでレポートします。

ペットにかかわるさまざまな専門家たちが考える「ペット共生」

この日のシンポジウムは公益社団法人日本愛玩動物協会が主催。会場となった東洋大学25周年記念ホールには、多くのペット共生住宅の関係者が集まりました。
ご講演されたのは、環境省、日本獣医師会、ペット住宅建築家、猫専門建築士、日本愛玩動物協会会長といったペットにかかわる各専門家のみなさん。ペット共生住宅の実例や設備の紹介のほか、それぞれの専門分野における活動が周知される場となりました。要点をかいつまんでお伝えします。

環境省が着目する、欧米の動物福祉と日本の動物愛護とのジレンマ

トップバッターは環境省の則久雅司さん。「人とペットが共生する社会の実現に向けて」と題し、日本の動物愛護の歴史、動物に対する日本人の考えと欧米人の考え方の違いについて述べました。

環境省自然環境局動物愛護管理室長、則久雅司さん。

則久さんによると、「日本では動物を"共に生きる存在、命あるもの"と考えてなるべく殺生を避けるが、欧米では動物を"神が与えてくれた資源、管理するもの"として扱っていました。が、近年は"感受性あるもの"とわかってきたので苦痛を与えないことが優先されるようになり、日本でもペットを通じて同様に考える人が増えてきました」とのこと。「両者のジレンマを超えるには寛容さが必要では」と述べました。
つねに注目されるペットの殺処分については、「安楽死が民間で行われ行政の統計がない欧米と行政の統計がある日本では、安易に比較できない」としながら、年々減ってきた日本のペット殺処分について高く評価できるとおっしゃっていました。

日本獣医師会が取り組む「ワンワールド・ワンヘルス」

次に登壇したのは公益社団法人日本獣医師会副会長の酒井健夫さん。酒井さんからは、2012年に世界獣医会と世界医師会が推進することになった「ワンワールド・ワンヘルス(1つの世界、1つの健康)」から日本獣医師会と日本医師会で学術協力のための協定を取り交わしたこと、「ワンワールド・ワンヘルス」の普及啓発とともに人畜共通感染症の流行阻止や抗菌剤の耐菌性対策、食の安全の確保のために連携シンポジウムを開催していることなどが報告されました。
また、近年流行した人畜共通感染症の感染経路についてのお話や、狂犬病がいまだ世界で毎年6万人前後の死者を出していること、2013年に台湾で発生したことを前提に、日本での狂犬病予防接種率が50%を切ってしまい、基準とする70%に達していないことを問題視されていました。

「スロープの家」がもたらすペットとのコミュニケーション

一級建築士事務所 前田敦計画工房の前田敦さんは、ご自身が設計されたペット共生住宅「スロープの家」について発表されました。
「スロープの家」は犬が室内を自由に走り回ることができ、飼い主と目線の高さを調整する装置として非常に有効とのこと。犬と猫がいる場合は高さでそれぞれの居場所を分け、猫の通り道も飼い主と目線の高さが合う場所があると、よりコミュニケーションができるようになったそうです。
まさにドッグランが家の中にある「スロープの家」。注文住宅をお考えの犬と暮らしている方はぜひ、ご参考に。

一級建築士、前田敦さん。

猫専門建築士が失敗した猫の設備とは?

株式会社ネコアイ代表取締役の清水満さんは、愛猫との出会いにより猫専門建築士に従事することになった猫好きな方。講演では、これまでの経験をもとに猫が利用しなかった設備などの失敗談をお話しいただきました。

猫専門建築士、清水満さん。

まず1つ目は見た目もおしゃれな吊り橋。いつか取り付けたいとお考えの方人には残念ですが、子猫以外の猫は不安定なものがキライなので使わないそうです。次にハンモック。これも高すぎる場所に設置すると使ってくれないのだとか。また、吹き抜けの猫ステップは猫がゲロをしても掃除ができないのでやめたほうがいい、とのことでした。
また、玄関の猫の脱走防止柵は猫の運動能力をあなどらずに天井までのものを設置してほしい、猫トイレはなるべく大きなものを用意し粒の小さな猫砂のほうがいいとし、フタ付きの猫トイレは猫にとって「臭くて嫌な場所」になっている可能性が高いとご指摘。猫がトイレからダッシュで出ていく理由は「トイレにいたくないから」なのだとか。心当たりのある方は、猫トイレや猫砂をあれこれ試してみてはいかがでしょうか?

ペット共生マンション・住宅には、入居のルールや管理運営体制の整備、マナーの普及が重要

主催者である日本愛玩動物協会の会長・東洋大学教授の東海林克彦さんがこの日最後の講演者でした。まず東海林さんによると、会場となった東洋大学は「日本で初めて動物愛護の団体を作って道徳教育を実施した広井辰太郎先生が教鞭をとった動物愛護ゆかりの地」だそう。

日本愛玩動物協会会長、東海林克彦さん。

東海林さんは集合住宅の居住者間トラブルを取り上げ、違法駐車、生活音の次が「ペットの飼育トラブル」であることを示しました。そして、人とペットが共存するより良い社会づくりには飼い主が敷い環境を改善したり適正飼養を学ぶだけではなく「社会環境」を適切なものにする必要があると述べました。
最後にペット共生マンション・住宅には、人とペットが暮らしやすい設備や構造、入居ルール・管理運営体制の整備、マナーの普及が重要とし、5月にスタートする「ペットフレンドリーホーム宣言」を紹介しました。

ペットフレンドリーホーム宣言とは?

ペットフレンドリーホーム宣言とは、日本愛玩動物協会が5月にスタートさせる取組み。「マンション・住宅のペット共生住宅の実現を目指すための行動を日本愛玩動物協会に対して意思表示するもの」となります。
ペット共生マンション・住宅のオーナーさんや管理会社、不動産会社は、他のペット共生マンション・住宅との差別化ができるほか、入居者への適正飼養やマナー普及のサポートができます。また、ペットを飼う人にとっては、ペットと快適に暮らせる物件選びの目安になるといえるでしょう。
詳しくは、日本愛玩動物協会ペットフレンドリーホーム宣言」をご覧ください。
参考:ペット共生マンションをペットへの取り組みで差別化する「ペットフレンドリーホーム宣言」5月発足。3月にシンポジウム

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