ペット可物件を知る・探す

猫と暮らす人が知っておきたい戸建ての選び方

猫にもっとのびのび運動させてあげたい、多頭飼育したい、保護猫の一時預かりなどがしたいという猫好きさんへのおすすめは「戸建ての購入」です。では、どのような物件を選ぶとよいのでしょう?
一級建築士でペットシッターのいしまるあきこさんに、猫と一緒に暮らすという視点で戸建ての選び方を教えていただきました。

猫が主に過ごすリビングなどは2階以上がベター

猫は居心地の良い場所を選んで移動し、快適だと感じるところでたくさん眠ります。日中、猫が日当たりの良いリビングでお昼寝しているのは、そこが快適だと感じているからです。
猫が過ごすことの多いリビングや寝室などは、2階以上にある間取りがおすすめです。ただし、敷地に対して住宅の面積に余裕があり日当たりが十分確保できる第一種低層住居専用地域などでは、1階にリビングがあることがほとんどです。低層の住宅街をメインで探していると、2階にリビングがある住宅にはなかなか出会えないでしょう。
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猫が主に過ごす部屋が2階以上にあることをおすすめする理由は、外で暮らす猫やほかの動物からの影響を受けないようにするためです。
なわばり意識が強い猫にとって、1階のガラス窓から外で暮らす猫などが間近に見え、においがするのは、刺激が強すぎるのです。

2階なら他の猫や動物が近すぎない

同様の理由から、猫に影響を与えるうえ襲う可能性がある、タヌキやハクビシン、イタチ、アライグマなどの動物が多く住む山や森が近いエリアも、おすすめできません。
外部からの刺激に対して、猫は家の中のなわばりを守ろうと、窓まわりに爪とぎやスプレー(マーキングとしての濃いオシッコ)をすることが増えます。これではせっかくの新居も荒れてオシッコ臭くなり、人間が滅入ってしまいます。
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窓とカーテンを閉めて外部の影響を遮断することもできますが、そうすると窓を開けての換気ができません。2003年以降に建った住宅では「24時間換気」の設置が義務づけられているので窓を開けなくても換気はできています。それ以前に建った住宅では窓を閉め切っていると自然には換気できず、においが籠りやすく人間が体調を崩す原因になります。
筆者は保護した6匹の猫たちと暮らしています。6匹のうち1匹だけが外に出たがるので脱走対策をするようになりましたが、以前住んでいた2階建ての家では脱走したがる行動はありませんでした。2階建ての後に住んだ平屋(ひらや:1階建ての家)の住まいでは、外で暮らす地域猫や屋内外を行き来する近所の飼い猫の影響を強く受け、外に出たがる行動が極端に増えました。
猫にとって外からの強い刺激は、ストレスになったり野性を呼び起こしたりします。実際に住むようになってから、はじめて猫がどう反応するかが分かります。そのため、猫がよく過ごすリビングなどは1階よりも2階以上のほうが安心です。
もし1階で猫が過ごすなら、掃き出し窓(床まである窓)よりも腰窓(腰の高さまで壁がある窓)の部屋のほうがおすすめです。透明な掃き出し窓なら、窓の下半分に半透明なシートを貼るなどして外からの視覚的な刺激を減らしましょう。

このように刺激を受けやすい1階は、窓に対策を

猫同士の目が合うことはケンカを意味します。外と屋内の猫の目線ができるだけ近くならないように、そして外を歩く猫よりも中にいる猫が上の位置にくるようにします。窓から見える塀が高い位置にあると、塀の上を歩く外の猫の目線が屋内の猫よりも上になってしまうため注意が必要です。
猫は他の猫や敵に上から狙われているような状況では不安を感じます。不安を感じると、なわばりを守るためにマーキングをすることが増えます。猫の目線を想像しながら内見しましょう。

猫が脱走しにくい間取りを選ぶ

外で暮らしていた経験が長い猫の中には、猛烈に家の外に出たがって脱走する子がいます。特に戸建てでは外で暮らす猫など様々なにおいの刺激が強くあり、脱走するようになるきっかけが生まれやすいのです。
江戸川区のOさま邸では、保護して迎えた6匹の猫のうち1匹だけが外に出たがるため、リフォームで玄関に脱走防止扉を設けました。対策前は住まいの売却・引越しまで検討されるほどOさまご家族全員が猫の脱走に悩まされていましたが、対策後1年半経過しても脱走は起きず、ご家族全員が安心して暮らせるようになりました。もし、猛烈に外に出たがる子がいるときには、脱走しそうな場所を気にしながら住まいを選びましょう。
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猫の脱走は、人が出入りする「玄関」や洗濯を外に干している際に開けた「掃き出し窓」から庭やバルコニーを経由することが多いです。窓に網戸をしていても、網を破ったり戸を倒して出ていくことがあります。2階からでも地面に飛び降りたり木を伝って下りたり、3階でも自身の住まいと隣家の屋根などを伝って逃げたりすることが可能です。いまでも住宅の屋根の上で日向ぼっこする外猫を見かけますが、猫は住宅の塀・ひさし・手すり・屋根などを伝って建物を上り下りするのが得意です。猫にとって足幅30ミリ程度の水平なものは、「道」であり「地面」なのです。
▼参考写真:筆者撮影 東京都江戸川区にて。店舗の2階手すりとひさしを歩く白地に黒ぶちの地域猫。このあと屋根の上に消えていった

▼参考写真:筆者撮影 千葉県内にて。高木をスルスルと上り下りする長毛の白猫。地域猫か飼い猫かは分からない。

間取りとしては、玄関とほかの部屋や階段の間に扉があるもの、洗濯物を干すバルコニーや庭の前に一部屋あるものは脱走されにくいです。
戸建てはマンションと比較して、玄関前が扉などで仕切られていない間取りが多いですが、玄関前の廊下などが扉で仕切られているものを選ぶと安心でしょう。扉のレバーハンドルを上手に操作して開けてしまう子がいたら、簡易ロックなどで対処します。もし扉がない場合は、脱走防止扉を後付けできるように、玄関まわりで扉を固定できそうな壁の位置などを確認しておきましょう。
バルコニーでは、たとえば洗面所から出られるなら、洗面所の扉を閉めておけば脱走を防ぐことができます。室内干しスペースが手前にあれば、それだけで脱走防止つながります。
また、人が出入りしないような小さな窓に対しては、近くに飛び移れそうな木や屋根がないかを確認しておくと安心です。

猫視点で窓をチェックする

●透明な窓がある家を選ぶ

窓からいろいろなものが見えるように、窓のガラスが透明な家を選びます。猫にとって、窓の外に「動くもの」が見えるのは良い刺激になります。植物に集う鳥や虫、歩く人や走る自転車、少し距離があるなら動く車なども、猫が観察できて毎日が楽しくなります。
ただし、前述のように1階の窓から外で暮らす猫の姿が見えることは、家の中の猫に悪い影響がでることがあるので注意が必要です。
住宅の密集地では半透明で外が見えないガラスが使用されていることが多いため、少なくとも1カ所は透明な窓がある家を選びましょう。
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●細長い窓や小さな窓も、猫は楽しめる

築年数が浅く密集地に建つ住宅には、いろいろな高さに横長の細い窓や小さな窓が設けられていることがあります。景色が悪く大きな窓を作れないときに、このような窓が設けられがちです。じつはこのような低過ぎたり高過ぎる位置にあって人間からはあまり景色が見えない窓が、猫にとって楽しいポイントになります。
例えば2階の床に近い下のほうに窓があれば、猫が床面にいながら下を眺めることができます。天井に近い上のほうに窓がある場合は、家具やキャットステップなどで上にのぼれるようにしてあげれば遠くの景色を見ることができるでしょう。
見えにくい位置にある窓は半透明で外が見えない場合が多いので、どのような景色が見えるか窓を開けてチェックしてみてください。

●窓のガラスは交換できる

気に入った物件に1カ所も透明な窓がないときや猫にとって良い位置にある窓のガラスが透明ではないときは、ガラスを交換するのもひとつの手です。
アルミサッシや木製建具のガラスは基本的に交換ができるようになっています。器用な方ならDIYでサッシのガラス交換もできますが、ガラスは想像以上に重いので作業は慎重に行ってください。また、防火地域・準防火地域では、使用できるガラスの種類やサッシに制限があることが多いので注意が必要です。ガラスの交換工事は、サッシ屋さんやガラス屋さんなどにお願いしましょう。

猫を外に出すなら、住まいのエリアを選ぶ

猫が屋内外を行き来する飼育スタイルは、現代では推奨されていません。猫が外にでることで様々なトラブルが起きています。猫の病気やケガ、交通事故による死亡事故、ほかの家の花壇やゴミを荒らす、動物虐待者によって事件に巻き込まれる、未避妊・未去勢による望まない繁殖と子猫の殺処分などです。外で暮らしていた期間が長く家の中だけで暮らすのが難しい猫がいる場合や、リスクを知った上で屋内外を行き来させる飼育スタイルで住まいを探すのであれば、少なくとも家が建っている目の前やすぐ近くに大きな道路や線路がないエリアを選びましょう。
家と家の間が大きく離れているようなのどかに見えるエリアでも、車がスピードを出していることが多く、交通事故による猫の死亡事故は頻発しているので注意が必要です。

猫と暮らす 戸建て 選び方

猫を屋外に出すと常に交通事故の危険が…



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密集地によくある「再建築不可物件」は選択肢のひとつでしょう。「再建築不可物件」は接道していない(=法律で定められている道路に接していないなど)ことが多く、建て替えができません。古くなっても建て替えることができず、火事で焼失しても新築できないため、一般的には嫌がられ相場よりも価格が低いのがメリットです。
また、接道していないようなエリアには車が入りにくく道が細いので、車がスピードを出しにくいのが特徴です。猫が安心して外を歩けるようなエリアが多いでしょう。
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注意点として、「再建築不可物件」は築年数がかなり経っていることが多く、たいていリフォームが前提となり、購入金額に対してリフォーム金額が大きくなりがちなことです。また、密集地は防災や騒音などの別のリスクが増えます。さらに住宅ローンが使えないため、住まい選びとしては特殊な選択肢です。
猫を外に出している人は、玄関扉や窓や勝手口を少し開けたりして猫が戻ったときいつでも入れるようにしていると思います。しかし、窓などを少し開けておくことは、防犯面で不安があります。人が通ることができない小さな窓があれば、猫の出入りで困りごとが減ります。

入居後にもカバーできることはある

戸建てを選ぶ際の猫視点でのポイントをみてきました。以上であげた猫視点でのポイントすべてをクリアするのは難しいかもしれませんが、優先順位を決めておくと絞り込めるのではないでしょうか?
猫が新居を使う様子を見ながら本当に必要な内容を見極め、ご自身の工夫やDIY、リフォームでもカバーできます。近々、「猫向けリフォームをするなら気をつけたい戸建ての選び方」をお届けしますので、こちらもぜひご参考ください。

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